コラム 基礎知識編
セールスに使える?IT導入補助金
2023年7月3日
IT導入補助金(正式名称:サービス等生産性向上IT導入支援事業)とは、中小企業庁が行っている『中小企業生産性革命推進事業』の中のひとつの取り組みで、中小企業・小規模事業者等がITツールを導入する際に活用することのできる補助金です。
企業や団体が技術情報(IT)を導入する際に、その費用の一部を政府や自治体から補助してもらう制度であり、中小企業・小規模事業者等の労働生産性の向上を目的として、業務効率化やDX、サイバーセキュリティ対策等のためのITツール(ソフトウェア、アプリ、サービス等)の導入を支援する為に設けられました。
どのような事が補助対象なの?
補助の内容は、年度毎に状況を鑑みて変更され、2023年度は以下の3枠が設けられています。
- 通常枠(A・B類型)
自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部を補助することで、中小企業・小規模事業者等の業務効率化・売上アップをサポートする制度です。
- セキュリティ対策推進枠
サイバーインシデントが原因で事業継続が困難となる事態を回避するとともに、サイバー攻撃被害が供給制約・価格高騰を潜在的に引き起こすリスクや生産性向上を阻害するリスクを低減することを目的とする制度です。
- デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)
中小企業・小規模事業者等が導入する会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト・ECソフトの経費の一部を補助することで、インボイス対応も見据えた企業間取引のデジタル化を推進することを目的とする制度です。
補助対象者は限定されているの?
補助対象者は中小企業に限定されています。中小企業については、以下表の要件に該当する企業が対象となります。
業種分類 | 資本金額または出資総額 or 常勤の従業員数 |
製造業、建設業、運輸業 | 3億円以下 or 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 or 100人以下 |
サービス業(ソフトウェア業又は情報処理サービス業、旅館業を除く) | 5千万円以下 or 100人以下 |
小売業 | 5千万円以下 or 50人以下 |
ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く) | 3億円以下 or 900人以下 |
ソフトウェア業又は情報処理サービス業 | 3億円以下 or 300人以下 |
旅館業 | 5千万円以下 or 200人以下 |
その他の業種(上記以外) | 3億円以下 or 300人以下 |
医療法人、社会福祉法人 | 300人以下 |
学校法人 | 300人以下 |
商工会・都道府県商工会連合会及び商工会議所 | 100人以下 |
中小企業支援法第2条第1項第4号に規定される中小企業団体 | 上記業種分類に基づき、その主たる業種に記載の従業員規模以下の者 |
特別の法律によって設立された組合又はその連合会 | 上記業種分類に基づき、その主たる業種に記載の従業員規模以下の者 |
財団法人(一般・公益)、社団法人(一般・公益) | 上記業種分類に基づき、その主たる業種に記載の従業員規模以下の者 |
特定非営利活動法人 | 上記業種分類に基づき、その主たる業種に記載の従業員規模以下の者 |
小規模事業者については、下表の要件に該当する企業が対象となります。
業種分類 | 資本金額または出資総額 or 常勤の従業員数 |
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く) | 5人以下 |
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
製造業その他 | 20人以下 |
また、大企業のグループ会社や子会社(みなし大企業)の場合、資本金または従業員数の要件を満たしていても、申請することができませんので注意しておきましょう。
補助金額の上限・下限、補助率、補助対象経費について
通常枠(A・B類型)ついては以下の経費が対象になります。
A類型
補助額 | 5万以上、150万円未満 |
補助率 | 1/2以内 |
プロセス※数 | 1以上 |
ITツール要件(目的) | 類型ごとのプロセス要件を満たすものであり、労働生産性の向上に資するITツールであること |
賃上げ目標 | 加点 |
補助対象経費区分 | ソフトウェア購入費、クラウド利用料(最大2年分)、導入関連費 |
B類型
補助額 | 150万以上、450万円以下 |
補助率 | 1/2以内 |
プロセス数 | 4以上 |
ITツール要件(目的) | 類型ごとのプロセス要件を満たすものであり、労働生産性の向上に資するITツールであること |
賃上げ目標 | 必須 |
補助対象経費区分 | ソフトウェア購入費、クラウド利用料(最大2年分)、導入関連費 |
※「プロセス」とは、業務工程や業務種別のことです。
通常枠はA・Bの2類型に分かれ、補助額に差がありますが、補助額が大きくなるB類型は、満たすべき条件(プロセス数、賃上げ目標等)がやや厳しくなっています。どちらも、労働生産性の向上に資するITツールであるソフトウェア購入費・クラウド利用料(最大2年分)・導入関連費を補助対象としています。
セキュリティ対策推進枠については以下の経費が対象となります。
セキュリティ対策推進枠
補助額 | 5万以上、100万円未満 |
補助率 | 1/2以内 |
機能要件 | 独立行政法人情報処理推進機構が公表する「サイバーセキュリティ助け隊サービスリスト」に掲載されているいずれかのサービス |
補助対象経費区分 | サービス利用料(最大2年分) |
デジタル化基盤導入類型については以下の経費が対象となります。
デジタル化基盤導入類型
補助額 | 下限無し、100万円未満 |
補助率 | 金額や機能要件に応じて、3/4以内から2/3以内に変動 |
対象ソフトウェア | 会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、ECソフト |
補助対象経費区分 | ソフトウェア購入費、クラウド利用料(最大2年分)、導入関連費、ハードウェア購入費※ |
※ハードウェア購入費については、PC・タブレット・プリンター・スキャナー・複合機の場合、補助率1/2以内、補助上限額10万円に設定されており、レジ・券売機等については、補助率1/2以内、補助上限額20万円に設定されています。
IT導入補助金のメリット・デメリットについて
メリット
- 費用を抑えてITシステムを導入できる
IT導入補助金は、原則返済不要な補助金であり、申請し採択されれば、補助金が支給される為、ITシステムの導入し、費用の一部を負担してくれることが大きなメリットの一つかと考えられます。2023年度のIT導入補助金では、通常枠では1/2以内、デジタル化基盤導入類型では50万円以下は3/4の補助率で負担し、50万円を超える部分に関しては2/3の費用を負担してくれます。
- 企業の業務効率化・売上アップにつながる
昨今様々な企業の中期経営計画を拝見するとDX化の推進化を図る動きが目立っております。ITシステムを導入すれば、人手不足の解消や業務の効率化及び売上アップにつながる可能性は非常に高いといえます。
デメリット
- IT導入補助金の給付は後払いである
IT導入補助金は後から支給されるため、ITシステムの導入の際は、一旦自費で全ての資金を賄う必要があります。その為、手元に資金がないという企業は、大きなデメリットと言えます。
- 登録されているITツール/システムでの導入でなければならない
IT導入補助金を活用する際は、対象枠で指定されたITツールの中から選ばなければならず、対象ツールが限定されています。登録されていないITツールだとIT導入補助金の対象外になるため、注意しておきましょう。
以上ここまでIT導入補助金について簡単にまとめてきました。IT導入補助金は2017年から始まった制度で、2023年で7回目となります。交付申請の締め切りについては、随時追加される形で複数段階ありますので、詳細は公式HP:
https://www.it-hojo.jp/でご確認頂けたらと思います。また、書類の準備等申請に時間がかかるため余裕を持って始めるのがおすすめです。
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参考文献:
一般社団法人サービスデザイン推進協議会 「IT導入補助金2023」
author ABNアドバイザーズ田中