コラム 基礎知識編 
~ハプティクス技術とは?~

2023年7月23日

ハプティクス技術とは?


 近年、技術の進歩に伴い急速に発展している分野の一つにハプティクス技術があります。ハプティクス(haptics)と呼ばれる技術の事で力・振動・動きを与えることで利用者に「実際にモノに触れているような感触」をフィードバックする技術です。

 身近な例としては、スマートフォンのホームボタンを押し込んだような疑似触感や、家庭用ゲーム機などのコントローラーでゲーム中の衝撃を振動で感じる技術などもハプティクス技術の活用例です。

 最近では、派生技術である「空中ハプティクス」(超音波ハプティクス)にも注目が集まっています。この技術を使えば、空中に感触のある立体を作り出せるため、VR・AR・MRの領域と掛け合わせることで、あらゆる分野での応用が研究されています。

 例えば、NTTの開発した「ぶるなび」は人間の触覚や固有感覚の知覚特性を利用することで、外部に対して非固定にも関わらず時間的に安定した牽引力を知覚させる方法を発見し、装置を開発しています。これまでの携帯端末では引っ張ったり押したりという「牽引力」を表現することはできませんでしたが、この装置は「あたかも手を引かれるような感覚」を生み出しています。

 こういった製品は今後、視覚や聴覚に障がいを持つ方への情報伝達手段に応用される可能性も秘めていますし、スマホなどでも手を引いてくれるような歩行ナビゲーションの実現が出来るかもしれません。

 他にもSONYの開発した「マニピュレーター」はロボットハンド技術で、ロボットは未知の物体を安定かつ迅速につかみ、動かすための技術などもあります。手の中に設置された触覚センサーで、物体の壊れやすさ、正確につかむ力の大きさを感知し、花やケーキなどの柔らかいものでも滑り落とさず優しくつかむことが出来ます。従来のロボットは未知の物体への物理的な接触を苦手としていましたが、マニピュレーターは未知のものでも、つかむ力加減をコントロールすることが可能なため、将来的には介護分野での活用が期待されています。

 さらには物流や製造現場作業、家事支援や商品陳列などの幅広いサービス領域へとロボットの活用を広げる技術としても注目を集めています。

 5Gの実用化に伴い、ハプティクス技術の通信面での課題が解決され、今後はエンターテイメント領域だけでなく、操作の確実性、安全性が求められるモビリティ、医療や産業機器の分野などにも広くハプティクスニーズが広がりを見せています。

 少子高齢化が進む日本では労働人口の減少という大きな課題がありますが、ハプティクスの精度向上により遠隔での繊細なロボット操作やパワードスーツにも使用されることで、労働力の補助、補完に役立つ可能性もあります。

 このように将来的には多種多様な分野での活用が期待される技術ですので、ご紹介させていただきました。


author ABNアドバイザーズ川村