コラム M&A知識編
~異業種とのマッチング~
2023年7月31日
異業種とのマッチングの進め方
IT企業と非IT企業とのM&Aが活発化しています。2024年問題が取り沙汰されている中、限られた人的リソースで売上高や利益を上げていかなければならなず、DX化を推進する非IT企業がこの1~2年で激増しています。
DX化の重要な取り組みの一つとして、DX人材の確保が挙げられます。DX人材は、自社の既存のシステムやワークフローを可視化し、課題を抽出して、課題をワークフローの変更やIT化により解決できないかのインサイトを企業経営者に提供したり、解決策を現場に導入するPMO的な役割を担ったりと、単にIT知識だけでなく現場の知識や経験も必要とされるハイスペック人材が想定されることが多いです。
DX化人材の確保のために、M&Aを活用したい非IT企業が増えてきていると言っても過言ではありません。
他方、異業種のマッチングにおいて障壁となるのが、両者で収益構造、組織体制や文化に少なからぬ違いがあるということであり、これはIT・非IT企業のマッチングに限らず、異業種マッチングにおいては多かれ少なかれ障壁となることになります。両者の架け橋となる人材が特に譲受企業側に存在するのか否かが重要になります。
その中でもDX化推進のためのM&Aは、ビジネス連携というよりもDX化のための機能や技術を得るための提携になりますので、譲受企業は譲渡企業が持っている機能や技術が要件を満たしているのかを判断する必要があります。
この要件を満たしているのか、の判断も難しく、エンジニアのスキルシートを見ただけでは到底判断できません。
例えば、要件を満たす詳細設計さえ出来ていれば、コーディングが出来る人は世の中に溢れている(オフショアの外注開発でも対応出来てしまう)ように、開発言語だけではこのDX化推進の要件を満たすかの判断はできません。
開発言語や環境、インフラそれぞれによって多少の違いはありますが、既存のシステム、プロダクトやアプリケーションの改修でない限りどの言語を主としてきたかは重要とされないように思われます。
譲受企業の課題をIT化で解決できるのかのレビューを行い、経験や技術に基づいた要件定義、基本設計を描く機能を備えているかが譲渡企業にとって重要となることが多く、これまでの対エンドユーザーとのコミュニケーションやドキュメンテーションで培われてきたスキルが問われるところになります。
また、冒頭に記載したような絵に書いた餅のようなハイスペック人材や機能を譲渡企業に一挙に求めるのではなく、両者で役割分担してグループとしてDX化を推進するということも重要になります。
譲受側非IT企業の人材が自社のワークフローを可視化し課題を抽出して、譲渡側IT企業の人材が前述のIT化の部分を担う、これが一つのスムーズな連携の仕方であります。また現場サイドのPMOの存在も重要であり、提携後の連携において誰が現場サイドのPMOを担うのかもコンセンサスを形成した方が良いです。
DX化を目的とする異業種(非IT企業)とのマッチングにおいて、これらを踏まえてポイントを以下に纏めます。
- 譲受側でDX化により何を実現したいか明確化されているか
明確化されていない場合、明確化するための戦略コンサルティング機能が必要になります。
- 譲受側でワークフローを可視化する人材がいるか
存在しない場合、現場に入り込みゼロからワークフローを把握する必要があります。
- 譲受側の課題に対して、IT化のレビュー、要件定義、基本設計が出来るか
出来ない場合、上流工程の人材を採用するか既存エンジニアを教育する必要があります。
- 現場サイドのPMOが存在するか
存在しない場合、システムやアプリケーションの導入・運用・保守のための人材を確保する必要があります。
DX化を目的とした異業種のマッチングは、固定のエンドユーザーを確保できるという意味で、譲渡側としてはエンジニアの採用や教育において大きなメリットがある一方で、ミスマッチをすると提携後の連携がスムーズに行われないリスクも存在します。
異業種とのマッチングにご興味のある方は弊社にご相談ください。
author ABNアドバイザーズ澤田