地域の医療に役立つ薬局の存続のため

 今回は、経営されていた薬局を後継者対策の一環として大手薬局チェーンにM&A譲渡されました経営者ご夫妻にお話を伺いました。

左よりABNアドバイザーズ伊藤、経営者ご夫妻、あおぞら銀行磯貝氏

業種調剤薬局
所在地愛知県
従業員7名
資本金300万円
設立2014/7

このたびはM&Aのご成約、誠におめでとうございます。まず、会社の設立経緯、沿革などをご紹介いただけますか?


 この薬局は、もともと某クリニックの門前薬局として始まっており、私(前社長である奥様)が薬剤師としてそこへ勤務していたことがご縁となりました。当時は個人経営の薬局でしたが、先代からそろそろ店舗運営を誰かに引き継ぎたいのだがとのご相談を受け、それならばと私が引き継ぐ形で薬局運営に関与したのが始まりです。2014年ごろだったと思います。

奥様が引き継いだタイミングも、先代にとっては事業承継策であったわけですね。


 そうなります。もともと個人が経営されていた店舗でしたので、特別な何かをするわけではなく、勤務先が変わるわけでもなく、そうおっしゃるならとお引き受けしたのですが、同時にまた薬局を誰かが引き継がねば、お世話になっているクリニックにもお客様にもご迷惑がかかることはわかっていました。

 身近に後継者がいませんでしたので、やはりどなたかにお願いしなくてはならない。個人経営から株式会社成りしたのも、引き継ぐときは株式を譲るだけで済むから簡単、とどこかで聞いていたこともあり、主人の協力を得て会社形態での運営に切り替えた経緯があります。

本格的に薬局経営に携わるようになり、いままでと変わったことやご苦労されたことはありますか?


 何か特別に変わったことはありません。会社とはいえ、店舗内では今まで通りのメンバーが今まで通りに仕事をするだけですので。ただ、人材の確保には気を付けていました。処方箋枚数に応じて必要とされる薬剤師の人数が決まっていますので、そこだけは注意していました。

早くから事業の承継をご念頭におかれていたことになりますが、引き継ぐ方法としてM&Aを意識されたきっかけはあったのでしょうか?


 M&A会社から連日ダイレクトメールが送られてきましたしね。笑)でも、正直な気持ちとしては、本当に実現できるのかしら、という思いを持っていましたので、ご案内をいただいた何社かのM&A会社の方のお話を実際に聞いてみたり、少しずつですが考えてはいました。

その中で、ABNアドバイザーズにM&Aをご依頼いただきましたが、何か理由はあったのでしょうか?


 そうですね、終わってみて思うのは「結構大変だったな」ということでしょうか。これは気力と体力があるうちにやったほうがよいと。笑)

 会社といってもやはりひとつの商店みたいなもので、書類や数値ひとつとってもああだっけ、こうだっけと考えてみたり、あると思っていたものが見当たらずあちこち探してみたりと、準備に時間はかかりましたね。

 薬局は、クリニックの診療時間が終わってもしばらく店舗を開けていなければいけません。夜の診療の最後のお客さまがいらっしゃるのをお待ちして、店を閉めて残務を処理して帰宅するのは毎日夜の8時過ぎになります。そうした日常業務をこなしながら、M&Aの準備がありますので、交渉が本格的に始まって最後の1か月は特に体力勝負だったという印象ですね。

 交渉のお相手が決まってからは、先方様の知りたい情報をご提供しなければなりませんし、Q&Aの対応もやはり私たちがせねばなりません。昼間の業務の合間にできればいいのですが、周囲には神経は使いました。

 それにしてもABNアドバイザーズのご担当者の方は本当によく動いてくださった。Web面談を重ねていろいろとアドバイスをいただきました。ご一緒いただいて本当に助かりました。

 幸い、クリニックも今回のM&Aを受け入れていただけ、ホッとしています。M&Aの感想としては、ちょっと大変だったけど、よかった、安心できたということでしょうか。

新しいスポンサーに会社が引き継がれたわけですが、ご期待されることはありますか?


 いままでは小規模な経営でしたが、今後は大きな会社組織の中に身を置くことになります。経営体がしっかりしましたし、いままでとは違う安心感があります。引き続きクリニックやお客さまのお役に立つ薬局であってほしいと思います。

今後、ご夫婦でやってみたいことやチャレンジしたいことはありますか?


 いままでは仕事があって思うように旅行も行けませんでしたが、この間本当に久しぶりに車で旅行に出かけることができました。3泊ぐらいしましたが、ゆったりとした気分の旅行は久しぶりでした。今後のことはゆっくり考えようと思います。

事業承継やM&Aをお考えになっていらっしゃる経営者の皆さまにメッセージがありましたらお願いいたします。


 いろいろとお考えになることはあっても、まずは相談してみることでしょうか。実際のM&Aは交渉だけでなく準備なども手間がかかったりします。相談できる先を見つけて話をしてみる、そこから考えるのも悪くないのではないでしょうか。

(編集後記)
 ご夫妻は笑顔を絶やさず、お二人で快くインタビューにお答えいただきました。お話の端々からはいまの日常生活を非常に楽しんでいらっしゃるご様子が伝わり、聞き手も温かい気持ちになりました。今後のご多幸をお祈り申し上げます。